Y社の従業員であったXが、時間外労働の承認を得ずに時間外労働を行っていた。
Y社代表者が承認していた退社時刻から、業務上のメールを送信していた最終の時刻までの時間外労働分の割増賃金などの支払いを求めた事案。
<概要>
Xは、各就労日において多い日で1日70通以上、平均して1日50通程度のメールを作成・送信。また、電話対応や見積書・請求書の作成、顧客のもとを訪問しての打ち合わせ、書類等のチェックも並行して行っていた。欠勤した他の従業員のフォローや、新入社員に対する教育等もあり、Y社においては1か月~数か月の短期間で退職する従業員も少なくない状況だった。
<判決のポイント>
・Y社がXに対して所定労働時間内にその業務を終了させることが困難な業務量
・Xの時間外労働が常態化
・(Xが事前に残業を申請し、承認を得たか否かに関わらず)少なくともY社の黙示の指示に基づき就業(指揮命令下に置かれていた)
・Y社は適切な指示をせず、残業することを黙認
<留意事項>
このように、労働者が使用者の承認を得ずに時間外労働を行ったとしても、労働者の業務量や使用者の態度によっては、少なくても黙示の指示があるとして、実務上、労働時間制が認められています。使用者は、承認を得ずに時間外労働をおこなっている労働者を認識した場合には残業を禁止し、帰宅を命じるなどの措置を採らなければならないでしょう。
Comentarios